ユメソダテのクラウドファンディングを応援しています

当NPOの理事のお一人でもある、NPO法人ユメソダテの前川哲弥さんから、クラウドファンディングに挑戦するをお聞きして、だいぶ日が経ちましたが、2022年1月9日現在も挑戦中です。

今回、当NPOのクラウドファンディングにもご支援頂いたご縁もあり、前川さんにユメソダテの活動について、また、クラウドファンディングについて、お話を伺いました。

貴重なお話だと感じましたので、皆さんにもぜひお読み頂きたく思います。

以下、前川さんへのインタビューを全文掲載します。

 

  • 「ユメソダテ」について

    私は知的障がいのある息子を持つ父親です。数年前、将来息子がお世話になるだろう色々な福祉施設を見学して廻りました。ある施設の指導員の方に言われました。

    「あなたお父さんでしょ。ここでは仕事は教えられるけど、やる気は教えられないからね。やる気は家で育ててから連れてきてくださいね。」と。

その施設で訓練を受けている人たちを眺めると、誰一人楽しそうに仕事をしている人がおらず、その方の本音であることが分かりました。それから、「やる気を育てる」って何のことだろう?とずっと考えていました。

そしてある日、練馬区の社会福祉法人あかねの会がやっておられる喫茶店で、同会の余暇クラブの知的に障がいのある方々が書いた文集に出会いました。その中に素敵な夢について書かれた文章を見つけて思ったのです。夢や希望があれば「やる気」がでるだろう。あの施設で感じられなかった主体性も生まれるに違いないと考えました。

次に、夢というものはどうやって育つのだろうと疑問に思い調べている中で、ベネッセ研究所の論文に出会いました。

『人は最初、荒唐無稽な憧れを抱き、これを身近な大人、例えば親に承認されることで人に語るだけの値打ちがあるのだと思い、友人と語り合う中で自分の個性に気づき、色々な大人から社会の話を聞く中で、夢そのものが段々と社会的、現実的なものへと進化し、人生の目標へと育っていく』

といった論文でした。

夢は個人の胸のうちにあるものだけれども、育てるのは社会なんだな、と気づきました。

それから、様々な当事者から「旅先でお婆ちゃんに親切にしたらとても喜ばれたので、高齢者施設で働きたい」とか、「ケーキを焼いたら親戚中が喜んだので、パティシエになりたい」といった素敵な夢を聞いて廻りました。

そしてもう一つ、素敵な夢を語る当事者は、ほぼ例外なく、親子仲が良く、友人がいて、大人との豊かな交流があることにも気づきました。夢は社会が育てるのです。

よし、これは普通のオッちゃんオバちゃんの出番だと、夢育て活動を始めたのです。

試行錯誤を繰り返しながら、おおよその方法を決めて行きました。

まずは、その方の人生全体を傾聴し、夢になりそうな種を集めます。そして集めた夢の種一つ一つについて、本人に語って貰い、イメージの豊富な、やりたいことに結びつく夢の種を一粒、本人に選んで貰います。

そうやって自分で選んだ種を育てるために、関連する場所に一緒に行ったり、体験したりするのですが、一番良いのは、その夢の種に関連する分野で、社会で活躍されている先人の話を聞くことです。これは夢を育てる上で本当に効きます。

こうして「夢の種が夢へと育ち始めた」ところで、家族や親友など身近な人に語って貰います。できれば動画等で撮影し、語っている自分自身、それに対する周囲の反応も見てもらいます。

さらに、親しい人が集まる中で、夢が実現した未来にタイムワープして頂き、そこに至るまでのプロセスを、あたかも過去のことのように語って貰い、親しい人に応援して貰うという未来語りのダイアローグを実践します。

こうした一種の予祝は、イメージトレーニングになるだけでなく、夢を追いかける上で周囲の協力を取り付ける「調整プロセス」でもあります。

ここまで来れば、夢と、現在の自分とを比べて、何をすればよいかを一緒に考えていくスタート地点に立つことができます。

NPO立上げ以来、私たちは、ちょっとお節介なおじさん、おばさんとして、こうした夢育て活動を続けています。こうした夢育て活動については、2021年の高齢障害求職者雇用支援機構の職リハ発表会で発表させて頂きました。お読み頂けると嬉しいです。

  • 「認知と人生」について

さて、こうして夢を持った人に知的障がいがある場合、夢に向けて一歩踏み出すのに困難があります。そこで、このような認知上の困難を乗り越えるための方法を考え始めました。

ユメソダテの理事の一人、外山純先生がフォイヤーシュタインという教育心理学者の考え方や教材を用いた塾をされていて、かなり有効だと感じ、私もかなり勉強をしました。このフォイヤーシュタインの理論枠組みを用いて、日常生活や仕事の中で、認知機能を向上させる方策を見つけることができるのではないかとの仮説を立てました。

フォイヤーシュタインを、紙と鉛筆から解放したいという思いです。

そしてNPO内に「認知と人生研究会」を立上げ、最初のテーマとして、人生において重要な「お金を使うこと」を選びました。

そしてお金を適切に使うために必要なこと、「硬貨を金種別に分けられる」~「計画的にお金を使える」まで18の質問からなるアンケートを、知的障がいのある方を対象に実施しました。すると、不思議なことに気がつきました。

数字の大小(例:368円は299円より大きいこと)が分かるのに、自分の持ち金で1個のものを買ってこられない人が多くいることが分かったのです。

何でこんなところで躓くのだろう?持ち金を把握していれば、正札に記載されている金額と比べて、持ち金の方が大きければ買えるはずだ、と疑問に思いました。フォイヤーシュタインが分類した26の認知機能に分解して、この2つの活動がどう違うのか検討しました。

結果、「暗くて中身が見えずらい財布」がいけないんではないか、と気がつきました。

そこで、ホワイトボードを使った方法を提案しました。

 これをあるお父様が、お金を使うことができない24歳の息子さんに試したところ、10分強でお金が使えるようになりました。その様子をお母さまが撮影して下さった感動動画がございますので、是非、ご覧ください。

ホワイトボードの方法はとても上手く行きました。その後私自身も、世田谷区立のB型事業所2か所で同じ方法を試させて頂きましたが、毎回、長くても30分もするとできるようになりました。

ならば、このホワイトボードを持ち歩けるようにすればいいんじゃないかと考えました。

つまり、同じ構造をもった「コインケース」を使うということです。

既存の製品を探しましたが、大量に入りすぎるコインケースか、逆に桁が変わるまでは収納できないものかしかありませんでした。

次に既存のコインケースメーカーに企画を持ち込み作ってもらおうと思いました。とても親切な会社で社長様から直接お電話を頂き、社長様のご子息自身が30代で知的障がいがあり千円札でしか買い物ができず、大量の硬貨をため込んでいるとのお話でしたが、金型が高価であることと、工場ロボットのセッティングのし直しなど費用が掛かりすぎるので、年間2万個売れる見込みがないと新しい商品には取り組めないとのお話でした。

それならば、金型費用をクラウドファンディングすればよいのではないかと思いましたが、誰かが図面を引いて下さらなくては話になりません。友人のデザイナーの方が長野県のベンチャー企業、有限会社スワニーが色々なことを柔らか頭で対応して下さるとお伺いし、スワニーさんに依頼したところ快諾頂き、コンセプトモデルを作成して頂きました。3Dプリンターで作成したモックアップを作成して頂き、これを色々な方に見て頂きました。

その中で、高知のNPO法人ちびっとの石川さんをはじめ、島根県立特別支援学校の先生と、長崎県諫早市立小学校の特別支援学級の先生、さらに京都の特別支援学校でお金の教育をされているNPOの方にも興味を持ってくださいました。

特に諫早の深山先生が、モックアップを教室で使ってみたいとおっしゃって下さり、モックアップをお送りしました。構造化されたコインケースはお金の学習にとても効果的であるとの感想とともに、子どもの手には大きすぎること、使う中でお金が落ちにくくしてほしいこと、そしてもう少し格好の良いものが欲しいといったお声を頂きました。これはデザインをし直さなくてはならないと考えたのです。

ちょうど、その頃、世田谷区が新たな補助金を立ち上げられるという話を耳にし、応募したところ採択され、東急株式会社と、良品計画のデザインの責任者から独立されたデザイニト株式会社がプロジェクトに入ってくださいました。

そして、デザイニトの伊東社長を始め、若いデザイナーの方が2名入って頂き、現在のデザインへと進化していきました。

  • クラウドファンディングについて

    コインケースメーカーの社長様がおっしゃった通り、金型作成費用が高額で、世田谷区からの補助金だけではこのプロジェクトを進めることができません。仮に先に投資をして、後に製品販売で投資を回収する計画を立てようとすると、1個当たりの価格が高額になりすぎてしまい、本当に限られた人しか活用できないものになってしまいます。

    そこで、高額な初期投資をクラウドファンディングで回収することを考え、2021年11月22日から開始しました。

    意外と反響が大きく、3日と14時間余りで100万円を突破し、現在に至るまで、全国から300人を超える方々からご支援を頂いており、首都圏を中心にあちこちからお子掛け頂き、モックをもって説明に走り回っています。

    このクラウドファンディングも残すところ数日になってしまいました。

    もし私たちの取組みに共感頂けるようでございましたら、シェアや、ご支援などでプロジェクトにご参加頂けるとこの上ない幸いです。

    私は今回のコインケースは、認知機能向上の取組みを、紙と鉛筆から解放する一つのテストケースであると考えています。

    これが成功したら次は、農業という一つの仕事を取り上げ、働きながら認知機能を向上させる人材育成型農福連携事業を立ち上げたいと考えており、何人かの方と相談を始めています。

    農業や農福には全国に、そして高知にもご経験、知見をお持ちの方が沢山おられると思います。

    これを機会に繋がって頂き、色々ご教示頂けたらとっても嬉しいです。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

    長い文章を読んで頂きありがとうございます。

  •  前川 哲弥
    1962年大阪生まれ。世田谷区在。
    京都大学農学部卒、パリ国立農学院経営学修士(現AgroParisTech)。
    農林水産省1988~2005  経済協力開発機構(OECD)環境局1997-2001
    株式会社夢育て代表取締役 NPO法人ユメソダテ理事長
    一般社団法人農福連携協会アドバイザー

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